第3章 【第三講 前半】小説版に時系列なんて最早ない
銀魂高校の体育祭にしては意外な程、混乱も起こらず、とんとんと競技は行われていった。
午後の競技も粗方終了し、3Zにとっては次が最後の種目となる――棒倒し。
○○は体育祭実行委員のテントでスピーカーの調整をしていた。
競技に参加できない○○は、裏方の作業を手伝っている。
「○○、足は痛むのか?」
そこへやって来たのは、近藤勲率いる風紀委員の面々。
「ううん。そうでもないよ」
○○はかぶりを振った。
「何も、松葉杖ついてまで手伝わんでもいいだろう」
痛々しい……と言いたげに、近藤は○○の左足に目を向ける。
うちの委員を手駒に使いやがってと、近藤は忌々しげに顔を歪める。
「意外と忙しいんだよ、実行委員。今年はネット中継もしてるし、校長は変なもん出して来るし……」
○○はそびえ立つ巨大ロボットを見上げた。
それが何なのか、小説版を読んでいる読者諸賢はご存知だろう。
「つーか、病院に行ったらどうだ? 保健室にしか行ってねーんだろ?」
近藤の後ろで、土方が眉間に皺を寄せている。
○○の足には、未だチンケな添え木が当てられているだけ。応急処置に他ならない。
「平気だよ。それに、病院なんて行ってたら、体育祭が終わっちゃう」
○○は校庭に目を向けた。そこでは次の種目、棒倒しのための準備が進められている。
先端が赤い棒と白い棒。二つの長い棒が体育祭実行委員の男子達によって運ばれて行く。
だが、○○の視線はそこでは止まらない。
保護者でごった返すギャラリーの中でも止まらず、次の競技のために着々と集まって来る男子達の中で、ようやく停止した。