第3章 【第三講 前半】小説版に時系列なんて最早ない
ラジオ体操が終了し、校長の挨拶(校長が用意した賞品紹介含む)も済んだ後、○○は屋上から降りて来た。
「○○さん、お疲れ様です……って、どうしたんですか! その足!」
ひょこりひょこりと歩く○○を見て、新八は目を丸くして叫んだ。
○○の左足には添え木のようなものが当てられ、松葉杖をついていた。
「骨折した」
「ええ!? いつ!?」
今朝、見かけた時は松葉杖などついていなかったはず。
「ついさっきだよ。ラジオ体操が終わったあと」
それは本当に、つい数分前のこと。
体育祭開幕直前に骨折をするなど、不運以外のなんでもない。
「だから、競技には全部不参加」
「それは……残念ですね」
新八は自分がケガをしたかのように、肩を落とした。
○○が可哀相というのもあるが、
「白組にとっても痛いですね」
○○のケガは3Zのいる白組にも影響を及ぼすだろう。
○○の運動神経は学年でもトップレベル。その○○が抜けるとなると、戦力ダウンは否めない。
「うん。痛かったよ。自分で足折るの」
「痛いですよね……って、え? 今、なんて言いました?」
「自分で足折るの痛かったよ。痛いのわかってて折るんだから、そりゃあもう半端な覚悟じゃ出来ないよ」
○○の言葉を、新八は頭の中で組み立てて理解する。だが、組み立てる必要はない。
理解はしがたいが、ストレートにわかりやすく、○○は口に出している。
「足、自分で折ったんですか!?」
「そうだよ」
「なんで!?」
運動音痴で体育祭に参加したくないのならいざ知らず、○○はスポーツ万能だ。
仮病ならぬ仮ケガをする必要はない。いや、この場合は本当に骨折しているのだから仮ではないが。
それに、体育祭に出たくなかったのなら、サボれば済む話だ。