第10章 【第七講 前半】修学旅行のハプニングはベタ中のベタでよし
でもって、修学旅行当日である。
行き先は結局、例年通りの京都・奈良。
一旦は3Zの生徒が行き先を決めていいことになったが、銀八が全く意見を持って来なかったために白紙となった。
銀八が生徒達に意見を求めた時には既に行き先が決まった後だった。
ハタ校長のクソどうでもいい話を聞くというノルマを終え、持ち物検査の段に入っている。
修学旅行とは、学を修める場である。
観光が目的の旅行でも、ましては男女の仲を深めるために設定された旅行でもない。
勉学に不要なものは当然、没収の対象となる。
「ふん、ふん、ふん、ふん、鹿のふん~♪」
○○は奈良といえばの歌を口ずさみながら、手荷物検査の列に並ぶ。
目は手元の時代小説に向けられている。ハタ校長が喋っている間も、○○は小説を読み、ハタに反旗を翻していた。
それでも○○に対してお咎めはなかった。
訓示の最中に読書をされるのは不愉快だが、3Zの行いの中ではまともなものである。
静かに読書をするくらいならば、ハタ校長でも受け流すことが出来る。遺憾ではあるが。
「次、○○」
「ふん?」
○○は顔を上げた。目の前には銀八がいる。
列は進み、○○に順番が回っていた。
銀八はバッグに手を伸ばすが、○○はがっしりと自分の持ち物を死守した。
「先生、私が信じられないんですか」
○○は銀八に鋭い目を向ける。
「私が修学旅行に不要なものを持って来ているとお思いで?」
見つめ合う○○と銀八。