第10章 【第七講 前半】修学旅行のハプニングはベタ中のベタでよし
その日のロングホームルームにて、生徒の間からはたくさんの地名が挙がっていた。
北海道!
沖縄!
北陸!
東北!
マヨネーズ工場!
一部地名ではない場所も挙がっていたが、とりあえず、行きたい場所を生徒達は挙げていた。
それは、修学旅行で行きたい所の案だった。
今年の修学旅行、校長の発案でナゼか3Zが行き先を決めることになり、銀八はこうして生徒達から意見を募っている。
「○○はどうだ」
銀八は○○に話を振る。
○○、話し合いには無関心で、ずっと時代小説に読み耽っていた。
「行きたい所はねーか? ○○の意見は最優先で聞いてやる」
贔屓だ!
教師のくせに!
俺も銀八先生に賛同する!
うるせー、ヅラ!
ヅラじゃない、桂だ!
との声が教室中にあふれるが、銀八は右耳から左耳へと聞き流す。
顔を上げると、○○は意見を述べた。
「江戸時代」
○○の望む行き先は、どれだけ大枚をはたいてもたどり着けない所だった。
「タイムトラベルは無理だ」
「こことは違うかぶき町」
「連れて行けねーけど……既にいんだろ。あっちはあっちで」
銀魂高校教師ではない銀八の分身と、銀魂高校生徒ではない○○の分身が。
万事屋という何でも屋を営んでいるだろう。
「じゃあ、どこでもいいです~」
○○は再び小説に目を落とした。
「ていうか、□□さん、ホームルーム中にお茶って」
○○の机上の湯呑からは、暖かな湯気が立っている。