第1章 あなただけの⦅宿儺⦆
宿儺 side
なぜだか分からないが、ななの事を抱き締めていた。
そのまま、毎日 ななと湖で逢った。
そして日々は過ぎ6日目。
『いよいよ明後日でお別れですね』
ななは少し寂しそうに見えた。
宿「お前はそれで良いのか?」
『決められた縁談です。輿入れさせてもらえるだけ幸せです』
宿「なな は自分を卑下し過ぎだ。
自分の人生であろう? 誰に許しをこうのだ」
『……………』
宿「俺は自分の快、不快でしか物事を判断しない。
今、ここに居るのは なな と居るのが心地好いからだ」
なな は黙って俯いている。
宿「なな…お前が嫌でなければ俺と一緒に来ないか?」
『え?』
宿「俺は お前の事を大切にしたい。
見ず知らずの相手に輿入れすると思うだけで不愉快だ」
ななの目を見て、自分の思いを伝えた。
ななは黙っているばかりで何も答えない。
宿「…バケモノと一緒にこれからも過ごすのは嫌か…?」
『そんな事ない!
私も一緒に居たい…』
でも、と なな は口をつむんだ。
宿「親の事か?」
なな はコクリと頷いた。
『私の事を大切に育ててくれたのです。親を裏切るような訳には…』
宿「…………。
なら、明後日の輿入れの時間を教えろ。
村に出向き、そのままななを連れ去ろう。村や親には もう2度と会えなくなるが、それでも良いか?」
『…はい。お願いします』