第15章 言葉足らず⦅宿儺ver⦆
宿「黙って泣いていても分からん。理由を言え」
少しイラついたような宿儺の声に、なな はビクッと肩を震わせた。
なな の言葉を待つ宿儺だったが、何も話さない なな に宿儺は ため息をついて どこかへ行ってしまった。
背後から宿儺の気配が遠ざかっていく感覚に、なな はズギン と心が傷んだ。
⦅……嫌われちゃった…かな………⦆
その場にしゃがみこみ、また涙が溢れた。
⦅…どぅしよう………⦆
なな は、宿儺が自分の事を大切にしてくれていたのを充分理解していた。
出したご飯の味付けが、多少 しょっぱかったり、薄すぎても「美味しい」と言ってくれる宿儺が なな は好きだった。
初めて宿儺から ため息をつかれ、挙げ句去られてしまったのだ。
なな はもうどぅして良いのか分からなかった。
⦅…とりあえず、ここは宿儺さまの屋敷だから、私は出ていかなきゃダメだよね……⦆
ゆっくり立ち上がり、屋敷の外へ行こうとする なな に宿儺が声をかけた。
宿「どこに行くのだ」
『…宿儺さま……不愉快な態度を取ってしまって ごめんなさい』
宿儺の方を向かずに なな は外へ出ようとする。
宿「だから、お前はどこに行くのだ」
パシッと腕を掴まれ、宿儺を見れば その腕には見知らぬ女物の着物があった。
⦅……知らない着物……。
あぁ、きっと その着物が似合う人に 宿儺さまの気持ちは奪われたのかな………⦆
何も言わず着物を見つめ、瞳に涙を溜める なな。