第159章 矛盾と葛藤⦅五条⦆
なな side
言ってはいけない言葉を口にした。
『別れよう』
別れたくない。
でもツライの。
私だけが悟を好きみたいで、見えない距離があるみたいに思ってしまうの。
嘘のキライな悟はやっぱり怒った。
理由を促され、泣かないように息を整える。
『いつも 連絡するのは私ばっかり』
悟は貴重な特級術師。
特級相手の任務や他の任務で私より激務なのは知っている。
命をかける仕事。
精神的にも疲れる。私も任務が終わればクタクタだもん。
だから、悟から連絡無くても我慢しなきゃいけないと頭では分かってる。
でも、伊地知さんだって そんなに鬼じゃないもん、たまには お休みくらいあるでしょ?
たまには悟から連絡欲しいよ。
『私の誕生日 過ぎたんだよ』
二十歳を過ぎ、誕生日を祝われるたび 年を取ったんだと自覚するから、別に祝って欲しいワケじゃない。
でも、覚えていては欲しかった。
その日だけは私の事を考えていて欲しかった。
『ツライよぉ』
まだ好き。
でも苦しいの。
悟とこうして久しぶりに会えて嬉しい。
でも、こんなに苦しい思いをするなら別れた方がラクかもしれない。
最初から付き合わなければ良かった、って思ってしまうの。
自分から告げたのに涙が止まらないよ。
泣きじゃくる私を悟は優しく撫でてくれた。
優しくしないで。
その温もりに触れたら、気持ちが揺らいでしまうから。