第150章 付き人の苦労⦅五条ver⦆
『悟さまー?』
なな の声が屋敷に響く。
「…何だ、また目を離したのか」
髭を蓄えた老人に小言を言われ、なな は その場を会釈して通り過ぎた。
「五条の当主だと言うのに困ったものだ」
嫌みたっぷりの小言を なな は無視し、五条の名を呼んだ。
『ココに居たのですね』
木洩れ日が差す木の下で五条はうたた寝をしていた。
「なな も一緒にゴロゴロする?」
真っ黒なサングラスをつけたまま五条は聞いた。
『しません。
それより悟さま、今日は御三家の集会ですよ』
忘れてませんよね?、と釘をさせば五条は「そうだったっけ?」と軽く流した。
「御三家とか僕どうでも良いし。
任務入れてすっぽかそうかなぁ」
空を眺めて五条は言った。
『駄目ですよ。前から決められていた集会でしょう?
五条家当主として会に出席していただかないと困ります』
過去に五条は御三家の集会をドタキャンした事があり、当時の付き人は多方面から こっぴどく叱責を受けたとか。
その事を聞いていた なな は青ざめながら五条を説得した。
「なな も行くなら良いよ」
⦅ 加茂家ご当主も禪院家ご当主も苦手なんだよなぁ… ⦆
五条の言葉に なな は、う~ん と悩んでから返事をした。
『…会場に入る事はできませんので、送迎は ご一緒させていただきます』
なな の返事を聞き、五条はニッコリ笑うと正装に着替えるために屋敷に足を向けた。
「早くおいで、なな 」
『はい、今すぐ』