第147章 指針⦅虎杖悠仁⦆
『悠ちゃんは人を引っ張っていくだけの力があるんだよ。
悠ちゃんが不良になる事は無いと思ってるけど、人を引っ張っていく力があるから、悪い方には流れないで欲しいな』
「??
俺、バカだから なな が言ってる意味がよく分からなかった」
悩む虎杖に なな は笑って『そのうち分かるよ』と言って、自分の家に帰っていった。
「お隣さん来てたのか?」
祖父が虎杖に声を掛けた。
「ん?
あぁ、悪い方には流れないでって言ってったけど、どういう事?」
「グレるなって事だろうよ」
テレビを見ながら祖父は言った。
「ふ~ん」
家に帰ってきて祖父に怒鳴られたイライラは不思議と消えており、虎杖は いつも通り祖父と話をしていた。
「ご飯炊いてあんの?
夕飯何作るの?」
「米はといだ。おかずは決めとらん」
「ったく しゃあねぇな。
何か適当に作るか」
台所に行き、冷蔵庫の中身を確認しながら料理を始める虎杖。
料理をしながら鼻歌を歌っている様子を見て祖父はフン、と口角をあげ笑った。
⦅ お隣さんの嬢ちゃんには敵わんな ⦆
虎杖の短い反抗期も終わりにさしきった頃、祖父の体調が悪くなり入退院を繰り返すようになった。
「悠仁、お前は強いから人を助けろ」
祖父が最期に言った言葉。
祖父の火葬には なな も立ち会った。
火葬する直前、なな は祖父の顔を見て涙を流した。
涙を流さない虎杖の分まで。
祖父の火葬が終わるまで、虎杖と なな は気分転換のために外に出た。