第145章 麻痺⦅宿儺 ※暗⦆
村人の顔は、頭と顎で2つに分かれて上の部分が転がった。
どろっ…と流れる血に、なな は目眩がし、青ざめた。
「恐怖しているな。良い表情だ」
なな を見て宿儺は満足そうに笑っていた。
なおも止まらず流れ出す血は なな の近くまで広がり、辺りを染めた。
気を緩めると嘔吐してしまいそうな なな は手で口元を覆い、地を見つめた。
宿儺は なな に近寄り、口元を覆っていた手を掴んで自分の方を向かせると口を開いた。
「良いか、俺は人の死など何とも思わん。血が流れようと何も感じん。
人の恐怖が俺の快楽だ。
一度だけ猶予を与えよう。
此処から去れ」
なな をギロリと睨み、宿儺は掴んでいた手を離した。
『…………嫌です』
「ぁ"?」
不機嫌そうに なな を見下ろすが、なな は怯(ひる)まずに宿儺を見た。
『私は貴方の側に居たい。
貴方をひと目見て、貴方を好きになりました』
なな の言葉に宿儺は眉間に皺を寄せたまま、なな に向かい直した。
「此処を去れ。
俺は女など興味は無い。
女、子どもの肉は柔らかく旨い。それだけの感情しか持っていない」
『……貴方まで私の事を忌み嫌うのですね…』
強い口調で言われ、なな は下を向き、小さく呟いた。
『…殺してください…』
宿儺の太い腕に そっと触れ、なな はそう言った。
「何度も言わせるな。
死に急ぐ者を殺してもつまらん」
下を向いていた なな は眼に涙を浮かべて宿儺を見た。