第141章 はじまりは⦅五条⦆
五条見学に出たスタッフ達も次第に戻り始め、終業時間になった なな は『お先です』とステーションから出た。
更衣室へ向かう途中、なな の周りに黒い小さな塊がウロついた。
⦅ あぁ、またか… ⦆
目の前には伏黒の病室から出てきた五条が居たため、なな は五条に軽く会釈をし素通りした。
「……………⦅あの子……⦆」
五条を通り過ぎた なな は、まさか五条がこちらを向いているとも思わず、自分の周りをウロつく黒い塊に向かってデコピンをすると黒い塊は消えていった。
「へぇ♪」
その様子を見ていた五条は面白いものを見たかのように口角を上げた。
☆ ☆ ☆
五条の面会は以前より頻繁になり、スタッフの間では誰かが五条と接点を持ったのでは無いかと騒いでいた。
もともと五条に興味の無かった なな は対して気にしていなかった。
ある日、なな が伏黒の病室担当の日に五条が面会に来ており、声をかけられた。
「ねぇ、月宮 さん」
『…⦅何で名前知ってんの?⦆
何ですか?』
営業スマイルで対応する なな に、五条はいつもかけているサングラスを少しだけズラして なな を見た。
その瞳は噂通り綺麗な空色をしており、見つめていると吸い込まれてしまいそうな程だった。
「ふ~ん、弱いけど呪力あるんだ」
『??』
五条の独り言に首を傾げる なな 。
「呪い、視えてるんでしょ?」
『呪い??』
「この前消してたじゃん」