第141章 はじまりは⦅五条⦆
ピンポン、ピンポン…
ヴー…ヴー…
慌ただしい音が響く病棟。
入院患者の安全を考慮するためのセンサーの音やPHS(ピッチ)のバイブ音。
夕食を終えると次第に静寂を取り戻すが、そんな日常の騒がしさから離れた場所に伏黒津美紀の病室があった。
彼女は原因不明で寝たきり状態だ。
以前は毎日のように弟が面会に来ていたが、忙しいのだろうか最近は週末にしか面会に来なくなった。
親が蒸発したとの事で身元引受人は五条と言う男性の名になっていた。
五条も面会に来ていたが、弟と一緒に面会に来る事はほとんど無かった。
☆ ☆ ☆
「ねぇ聞いた? 伏黒さんの所に五条さん来てるって!」
「えぇ?! ホント?!」
色めき立つステーション裏。
まるでモデルでもやっていそうなスタイルの良さと白髪と言う見た目で五条は目立つ存在なのだ。
なぜかいつも真っ黒なサングラスをかけているが、サングラスの下の瞳は綺麗な青空色なんだとか。
今でこそ男性看護師が増えてきたが、それだけ目立つ五条は若い看護師には憧れの的だった。
面会に来る度、黄色い歓声が湧き、なぜだか入院中の患者までも五条に見に来る始末だ。
「ねぇ、なな も見に行かない?」
同期の友達が声をかけた。
『私はいいよ、コール鳴ったら困るでしょ』
行っておいで、と送り出せば「じゃあ ちょっとだけ行ってくるね♪」と同期も五条の元へ向かった。