第10章 守ってあげる⦅虎杖悠仁⦆
なな は、なぜか少年院の中に入っていった時の虎杖の笑顔が頭に浮かび、虎杖に向かって怒鳴りつけていた。
宿儺に追い詰められた伏黒は、新しい術を使おうと構えたが、穏やかな表情で話し始めた。
なな が気がついた時には、虎杖の体から入れ墨のような模様が薄くなってきていた。
虎「……悪ィ、なな。
怖い思いさせたな」
口の端や抜き取られた心臓部分から、血が溢れ出してきた。
『虎杖くん!!』
倒れる虎杖の元へ急いで駆け寄るが、虎杖は地面へ倒れこんでしまった。
虎杖の周りの水溜まりは、少しずつ朱色に変化し、その出血量の多さを物語っていた。
伏「…………」
『…虎杖くん……』
涙を雨で隠すように静かに空を見上げる伏黒と、虎杖の隣で泣き崩れた なな。
『…虎杖くんのバカぁ……』
☆ ☆ ☆
少年院に戻ってきた伊地知は、伏黒と なな を車に乗せ、虎杖の体は別の車に乗せて高専まで戻った。
伏黒は静養が必要なため、家入の治療後、自室で休むように言われた。
泣き腫らした顔をし、呆然としている なな に「なな、辛かったな…。お前も休むといいよ」と家入は優しく声をかけたが、なな は首を横に振った。
『…虎杖くんの解剖……見届けさせて…ください…』
家「そぅか……」
家入と一緒に霊安室へ入ってきた なな に、五条は隣の席に座らせた。
五「無理しちゃいけないよ」
『大丈夫です…』