第124章 視線の先⦅虎杖ver⦆
なな をこんな世界に引きずり込んでしまった責任から黙り込んでいる俺に、なな は声をかけた。
『虎杖。まぁた "俺のせいだ" って顔してるよ。私は誰のせいでもないと思ってる。それに、野薔薇や伏黒、五条先生に逢えたから良かった』
ニコッと笑う なな を見て、俺はなぜだか泣きそうになった。
『虎杖もたまには仙台に戻っておいでよ♪』
怖い思いをたくさんさせたのに、窓として これからも呪いを見なければならないのに。
なな は強くて優しい。
拳をぎゅっと握り、俯く俺の背中を五条先生がバシッと叩いた。
「仲間の出発だよ♪ 笑顔で送り出そう」
五条先生の言葉に、なな も釘崎も目に涙をためながら笑顔になった。
伏黒も普段見せない笑顔で なな を見た。
五条先生も笑っている。
自分らしく。いつもの笑顔をイメージする。
「いってらっしゃい、なな !」
片手を上げ、ニッと笑って なな を送り出した。
叶うなら、なな が見ている景色を一緒に見てみたかった。
なな と一緒に仙台に戻って、術師として なな を守りたかった。
でも俺は宿儺の器。
高専の監視が外れる仙台に戻る事なんて出来ないんだ。
俺の初恋は胸の奥にそっとしまっておこう。
*おわり*