第113章 反抗⦅伏黒⦆
何事も無いように振る舞っていた伏黒だったが、学校が終われば毎日 津美紀の病院へ面会に行っていた。
なな も毎日面会に行っていたが、できるだけ伏黒とは時間が被らないようにしていた。
ある日、なな より先に伏黒が面会に来ていた。
津美紀のベッド脇の椅子に座り、うなだれている伏黒を見て、なな は『…恵』と声をかけていた。
「………」
伏黒は なな をチラリと見て、黙って津美紀を見た。
『顔色悪いよ?
…ちゃんと寝てる?』
心配そうに伏黒に声をかける なな に、伏黒は黙っていた。
この頃から伏黒は五条に連れられて呪いを祓う見学や、実戦に繰り出されていた。
呪霊たちが活発になるのは夜のため、十分な休息は取れていなかった。
『…私ね、看護師目指す事にしたの』
なな は独り言のように続けた。
『津美紀ちゃんが入院するようになって、自分にできる事を考えたの。
恵は自分の正義を貫けるだけの強さがあるけど、私は弱いから…。
人の弱さに寄り添える仕事に就きたい』
「…そぅか……」
『津美紀ちゃんが心配なのは分かる…。
でも、私は恵の事も心配。
だから。
津美紀ちゃんの事は私に任せて。
恵は、恵にしか出来ない事を自信をもってしてね』
津美紀と過ごす時間が長く、誰も居ないアパートに帰る孤独さを伏黒は感じていた。
津美紀以外は自分の事に関心など無いのだと勝手に思い込み、誰にも頼ろうとしなかった。