第113章 反抗⦅伏黒⦆
⦅ 叩かれたのは なな だけか…… ⦆
伏黒の視線の先に気づいた女子たちは「違うの」とか「だって コイツが」とか、わけの分からない言い訳を始めた。
「俺のせいにしてヒト傷つけないでくれる?」
キッと女子を睨み付けると、女子たちはバツが悪そうに足早に去っていった。
「……大丈夫か?」
なな にそう聞けば、なな は伏黒から視線を外して頷いた。
「よく囲まれてるんだって?」
『……………』
伏黒の質問に黙り込む なな を見かねて、津美紀が伏黒に声をかけた。
「なな ちゃん…、今までも何度か手をあげられた事があるの。
でも その度に "恵には言わないで" って言われて…」
津美紀の話を聞いて、伏黒は口調を強めて言った。
「…なな は誰も傷つけたくないから反撃しないのか? …………馬鹿だろ…。
傷つけるのは暴力だけじゃない。言葉も刃物になるだろう。
…誰も傷つけないなんて無理なんだよ……。
そんなんだから囲まれるんだ……」
「恵、そんな言い方!」
後ろで津美紀が怒っているのが聞こえたが、伏黒は知らないフリをして その場を離れた。
「ごめんね、なな ちゃん……」
申し訳なさそうに なな に謝る津美紀に、なな は首を振った。
『…私も、恵の事 知らなかったのかも……。
"知ったフリ" だったのかな……』
なな はぽろぽろと涙を流した。
津美紀は なな を優しく抱きしめ、頭を撫でた。
どこかギクシャクするようになってから 、津美紀は呪われた。