第113章 反抗⦅伏黒⦆
不良Aの説明に、伏黒は額に手を置いて盛大に ため息をはいた。
「お前、それ見てて何もしなかったワケ?」
「え、いや…あの……」
伏黒は語尾を濁す不良Aを睨み付け、舌打ちをした。
「ドイツもコイツも…。
ホント、イラつくな……」
伏黒は不良たちに背を向け、なな の所へ向かった。
☆ ☆ ☆
「伏黒くんのそばウロつくなよ」
「目障りなんだよ」
口の悪い女子たちの声がした。
「恵に話しかけられないからって なな ちゃんに言いがかりをつけるのは どぅなの?」
津美紀の声だ。
「ただの幼馴染みのくせに調子のってんじゃねェし」
女同士の揉め事で首を突っ込むのもどうなのかと思いながら、伏黒は少し話しを聞いていた。
『恵は こういうのキライだよ。
そんな事してる あなた達の事なんて眼中にも入って無いかもね!』
なな の声がした後、パチン、と乾いた音が響いた。
「なな ちゃん!」
焦る津美紀の声で なな に何かあったのだと思い、そっと覗き込むと なな は頬を抑えていた。
なな と津美紀を囲んでいる誰かに叩かれたようだ。
「そうやって伏黒くんの事を名前で呼ぶのも気に食わないんだよ!」
女子のヒステリックな声が聞こえると、伏黒は「俺が何?」と言って、声をかけた。
「伏黒くん…!」
一斉に振り返る女子たちには目もくれず、伏黒は津美紀と なな に視線を向けた。