第5章 ゼノ=ジェラルド
翌朝、まだ体調が完全に戻ったとは言えないゼノ様が、私が目覚めると既に机に向かい書類に目を通していた。
キャリー「ゼノ様、まだ休まれていた方が…」
ゼノ「外出の必要な公務はアルバートに任せた。ここでできる物だけだ。安心しろ。」
私は紅茶を入れてゼノ様に出した。
ゼノ「新しい城の完成は次の桜の季節になりそうだ。それに先駆けて3ヶ月後、商業施設のオープニングセレモニーを開く。キャリーにも出席してほしい。」
キャリー「はい。もちろん。」
ゼノ「街の名前…何か希望はあるか?」
国境付近の森を切り開いて作った新しい街。
この森は私とゼノ様の出会いの場所でもあった。
そして両国の人々が出会う場所。
キャリー「エンカウンター街というのはどうですか?」
ゼノ様は少し考えてから私を見つめ微笑んだ。
ゼノ「出会い…か。」
立ち上がると机の向かいに立っていた私の首に手を廻し引き寄せる。
ゼノ「良い名だ。」
囁くように言うと優しくキスをした。