第5章 ゼノ=ジェラルド
シュタインへ戻ると城はザワザワと慌ただしくなっていた。
ゼノ様の部屋を訪れると中にはアルバートが佇んでいた。
キャリー「アルバート、ゼノ様は?」
息を切らし訪ねる。
アルバート「今は眠っておられる。睡眠不足と過労が原因だろうと医師は仰っていました。」
ベッドに近寄る。
青白くなった顔は容体の悪さを物語っていた。
昨日の夜も私が訪ねてしまったせいでゆっくり眠れなかったはずだ。
目に涙がにじむ。
その手を握ると、ゼノ様がうっすら目を開いた。
ゼノ「キャリー…」
キャリー「ゼノ様…今はゆっくり休んで下さい。」
私の言葉を聞き終えると再びゼノ様は眠りについた。
ゼノ様が行う予定だった公務はアルバートとユーリが代わりに行うことになった。
私はゼノ様の看病を申し出た。
ベッドの横で溜まった書類に目を通しながらゼノ様の様子を伺う。
特に新しくウィスタリアとの国境に作る街については驚く程の資料があった。
商業施設、教育施設、公共施設など建物に纏わる物から、治安維持の為の警備についてや、湖、森など元々あるものを守る緑化計画まで。
ゼノ様との新居のことばかり夢見ていた私は何だか恥ずかしくなった。
その時ゼノ様が目を覚ます。
キャリー「何か飲まれますか?」
水差しを手にベッドに近づく。
私の手から水を飲むとそのまま肩にゼノ様がもたれ掛かってきた。
いつも威厳があり、堂々とした風格のゼノ様が私にもたれている。
髪を撫でると私を見上げ頬に優しいキスをした。
ゼノ「すまないな。」
弱音を見せるゼノ様に、胸が締め付けられ、同時に愛おしさが込み上げる。
キャリー「私の方こそ、何も知らずすみませんでした…。」
ゼノ「キャリーにはキャリーができることをすればいい。…今は…俺が眠るまでそばにいてくれるか?」
私は微笑んで頷くとゼノ様と一緒に横になり髪を撫でた。