第1章 ジル=クリストフ
翌日。
少し早めに身支度を終えた私はキッチンへと向かっていた。
どこへ行くのかはわからないけど何か軽食的な物が用意できればと思ったから。
プリンセス用にと素晴らしいキッチンを用意してもらってはいたが、庶民出身の私はどこか家庭的な騎士団のキッチンの扉を開いていた。
キャリー「アラン。どうしたの?」
そこには今日護衛としてついて来てくれるはずのアランの姿があった。
アラン「行く前に腹ごしらえ。お前こそなにやってんだよ。」
キャリー「お弁当…作れないかと思って。どこへ行くかわからないから簡単なものでいいんだけど。」
私がそう言うとアランが戸棚を開けて中からパンを取り出す。
アラン「こんなもんしかねーぞ。サンドウィッチくらいなら作れるか。」
今度は冷蔵庫からハムやチーズを出してくれる。
アランが並べてくれた材料で調理を始めると自然とアランも手伝ってくれる。
キャリー「ありがとう。」
笑顔でお礼を言うとアランは少し頬を染めて呟いた。
アラン「よかったな。」
キャリー「え?」
アラン「宣言式終わってから初めてだろ?2人で出かけるの。」
私の嬉しい気持ちが周りにバレバレだと分かり少し恥ずかしくなる。
アラン「幸せになれよ。」
たくさんの祝辞をもらったが、こんなに心がこもったものは数少なく、思わず涙が滲む。
キャリー「……ありがとう。」
そんなやり取りをしているうちにサンドウィッチが出来上がりあとはバスケットに詰めるだけとなった。
涙目で俯く私の頭にポンっと手を起き、アランがキッチンから出て行こうとした。
アラン「おぅ、ジル」
その声にぱっと顔を上げて振り向くと無表情のジルが立っている。
ジル「準備は出来ましたか?プリンセス。」
キャリー「はい!今日はどこへ連れて行ってくれるんですか?」
ジル「それはまだ秘密です。アラン殿も、よろしくお願いします。」
それだけ告るとキッチンを出て行こうとするジル。私も慌ててバスケットを持ち追いかけた。