第3章 ユーリ=ノルベルト
斜面の下まで来るとすぐそこに洞窟があった。
洞窟に2人で身を隠す。
岩の裏側に来るとブラットが壁に背を預け肩で大きく息をする。
よく見ると紺色のジャケットの肩に黒いシミが出来ていた。
キャリー「…!…血がっ!」
慌ててジャケットから片腕を抜くとシャツが真っ赤に染まっていた。
私はドレスを引きちぎり止血をする。
ブラット「キャリー様…お怪我は…」
キャリー「私は大丈夫です。動かないで。」
ブラット「すみません…。剣術があまり得意ではないので…。こんな形でしかキャリー様をお守り出来なかった。」
私は首を大きく横に振る。
キャリー「充分です…。私の為にこんな…。ごめんなさい。」
涙がこぼれそうになる。
しかしその時外から足音が聞こえた。
私はブラットに身を寄せて息を潜める。
その足音はだんだん数が増えていく。
思えば、野盗からしてみればこの洞窟なんてもちろんここに有ることを知っていて、あそこから落ちればここにいるのも既に暴露ているのかもしれない。
指先が冷たくなり震えてくる。
足音がすぐ向こう側に迫って来ていた。
キャリー(ユーリ…っ‼︎)
目をぎゅっと閉じると耳に入ってきたのは金属音だった。
だんだん数が増える金属音に援護の騎士団が到着したことを確信する。
「キャリー!」
私の名前を呼んだのは、ここに来れるはずのない人の声だった。
キャリー「ユーリ⁉︎」
立ち上がり洞窟の入り口を見る。
逆光でシルエットしかわからないその人は走って来ると私を抱き締めた。
キャリー「どうして…?」
ユーリ「アラン様の馬が戻ったから…。居ても立っても居られなかった。」
ユーリが私の頬を包む。
唇が触れそうになったその時、ブラットのことを思い出した。
キャリー「ユーリ!ブラットが怪我をしてるの。早く手当てをしないと!」
ユーリは私の後ろにいるブラットに目をやると近づき跪く。
ユーリ「キャリーを守ってくれてありがとう。」
そして肩を貸し馬車へ戻った。