第3章 ユーリ=ノルベルト
朝食を終えると部屋に新しい執事が控えていることを知らされる。
緊張の面持ちで部屋に入るとそこには背の高い男の人が立っていた。
淡い栗色の髪は少しウェーブがかっていてその優しそうな顔立ちによく似合っていた。
「始めまして。ブラットと申します。」
恭しく頭をさげるブラットにわたしも頭を下げる。
キャリー「キャリーです。これからよろしくお願いします。」
ブラット「至らない所もあるかと思いますがよろしくお願いします。」
柔らかな物腰と優しい印象にホッとした。
ジル「早速で申し訳ありませんが、次の公務に同行をお願いします。」
ブラット「はい。」
今日はシュタインへと出向く予定になっていた。
支度を整え馬車に乗り込む。
シュタインのプリンスであるユーリと婚約してから国同士の交流が盛んになり、お互いの国へ行き来することも多くなっていた。
御者と護衛のアランと数人の騎士にいつもなら執事代わりのジルかレオ。今日からはそれがブラットに代わっただけのいつものメンバー、いつもの道だった。
シュタインへと抜ける国境の森に入った所でアランが眉を顰める。
アラン「そっちじゃないだろう。」
アランの声に窓の外を見るが木々が立ち並ぶだけの景色でよくわからない。
しかし次の瞬間。私達が何者かに取り囲まれているのがハッキリとわかった。
アランが馬を降り剣に手をかける。
しかし戦については全くの素人である私が見ても多勢に無勢。
キャリー「アラン…ダメ…」
窓の外のアランに私の声は届いていない。
降りた馬の尻を叩くと馬は元来た道を勢い良く走って行った。
それを合図に馬車を囲んでいた野盗が襲いかかる。
抑えきれない野盗が窓を叩き割る。
ブラットが私に覆い被さり降り注ぐガラスから守ってくれる。
護身用の短剣で野盗を斬りつける。
アラン「ブラット!聞こえるか⁉︎」
ブラット「はい!」
アラン「俺の馬が城に戻った時は援護要請の合図になってる!あと少しだ!プリンセスを頼む‼︎」
馬車に乗り込もうとする野盗の隙をついてブラットが私の手を引き森の中を走り出す。
私を腕の中に抱きしめると急斜面を転がり落ちて行った。