第2章 レオ=クロフォード
仕立て屋に入ってきたマリアは私の声に顔を上げると驚きの表情を見せる。
マリア「プリンセス…。先日は失礼致しました。」
私の前に並べられている生地に目をやる。
マリア「ドレスを新調なさるのですか?」
キャリー「戴冠式があるもので…。」
私の答えにマリアの顔に刹那さが浮かぶ。
マリア「ついにご結婚ですね…。」
私は何と返していいのか分からず沈黙の時間が流れる。
マリア「プリンセスはレオのどこを好きになったんですか?」
キャリー「どこ…」
改めて聞かれるとなかなかはっきりと答えられずシドロモドロになってしまう。
キャリー「えっと…優しい所や…話しやすい所…あ、あとは誠実な所かな。」
マリア「誠実?レオが?」
キャリー「はい。始めは分からなかったけど、知り合って行くうちに、仕事にも人間関係にもとても誠実だなって。」
マリアは少し嬉しそうな顔をして私の手を取る。
マリア「プリンセス、楽しみにしてて下さいね!」
脈絡のない言葉にキョトンとしてしまう。
キャリー「楽しみ?」
マリア「私、頑張ります!あ、この事、レオには内緒にしておいて下さいね。」
そう言うと仕立て屋を出て行った。
なにを楽しみにしろと言っているのか。
見当もつかぬまま戴冠式の前日を迎えた。