第5章 訪問
その時だ。
ピンポーンと呼び鈴が静寂を切り裂いた。
反射的に二人は離れる。
明月の心臓はまだばくばくと騒いでいた。
「まったく、タイミングが悪いですね。はい」
七海が不機嫌そうにドアを開けると、聞いたことのある声が聞こえた。
「七海ィ〜。俺だよ俺」
ドアの外に立っていたのは、高専の教師、五条悟だった。
「何しに来たんですか、アナタ」
七海は低いトーンでツッコミを入れる。
「えっ! 五条さん!?」
「ネタはあがってんだよ。雫がいるんだろー」
そう言って五条は体を傾けて七海のうしろを覗き込んだ。
「悪い、七海。明月のことをうっかり話したら二次会にってここに来たがってさ」
ドアのうしろからひょっこり顔を出したのは家入硝子だ。
「ええっ、硝子さんまで!?」
家入は酒が入って出来上がっている様子だった。どうやら五条と家入の二人で飲んでいた——五条は飲めないのでソフトドリンクだろうが——ようだ。
どかどかと部屋に上がり込む二人に七海は半ば諦めて、二人を通す。
「酒もってきたぞ〜。僕は炭酸飲料とスナック菓子だけど」と下げていたコンビニの袋を広げだした。
「ほらっ、明月もこい。飲むぞ」
「ええっ、硝子さん。ここ(七海さんの家)でですかっ?」
「その通りだ。遠慮するな」
「さぁ、朝までみんなで飲むよー」
「人の家で何言ってるんですか。帰ってください」
五条と硝子に押し切られ、明月は七海の部屋に戻った。
壁際で腕を組んで立っていた七海とふと目があって、明月は少し困ったような嬉しいような顔をした。