第4章 きっかけ
東京校の医務室で、スマホが鳴った。
家入硝子は怪我人を診ていた手を止めて、白衣のポケットからスマホを取り出した。
スマホの画面には〝伊地知潔高〟と表示されている。
「伊地知か、どうした?」
『家入さん、忙しいところすみません。七海さんが怪我をしたんです』
「七海が? それで怪我の具合はどうだ? ひどいのか?」
『死ぬような傷ではないと聞きましたが……。
私は今、川崎の市街地にいて、
七海さんのところに向かっている最中なんです』
「そうか。私は高専にいるから来てくれさえすれば治療はできるが、
川崎なら明月がいたはずだぞ。
彼女、今日の任務で川崎だからな」
『明月さんですか?』
「ああ。伊地知、悪いが明月に連絡してくれないか?
彼女に頼む方がスムーズにいくかもしれない」