第1章 任務
「それなら、俺から行くよ?」
虎杖は大きな呪いにすばやく走り寄る。
間合いを詰められ、それでも少しも動じない呪霊に、虎杖はこぶしを叩き込んだ。
——逕庭拳!
虎杖のこぶしが呪いの左頬にめりこみ、
呪いの顔が不自然なほどに横を向いた。
しかし次の瞬間、呪いは打撲を受けた顔のまま一回り大きくなってケラケラと笑った。
「なんだ? こいつ、逕庭拳のダメージが少ない?」
けれど、呪いは立ち上がって近づいてくる様子もなく、
ただ部屋のすみに座っているのだ。
「こんどは私が!」
明月はナイフをかまえた。ナイフは呪力で覆われている。
呪いの方へ走り寄り、切りかかった。
にぶい音がして呪いから少量の体液が流れた。
だが、どこか手応えがないのだ。
そして呪いはまたも二回りも大きくなってニヤリとした。
「センパイ、それ……!」
虎杖が指さしたのは明月のナイフだ。
いや先程までのナイフではない。まとっていた呪力は完全になくなり、ただの小さなナイフに戻っている。
ふたりは顔を見合わせた。
「こいつ、俺たち(私たち)の呪力を吸ってる!?」