第19章 坂田銀時《ずっと二人で月が見たい》
夜空を見上げる銀時の横顔を○○は盗み見る。
――俺が必ず護ってやる。
一年前、銀時に引き留められた際の言葉を思い出す。
あれは、どういう気持ちで言ったのだろう。
そもそも、引き留める言葉だったのかもわらかない。
ここに残ってほしいと言われたわけではない。
あれから一年。
顧客兼酒飲み友達だった銀時は、○○にとってかけがえのない人になっていた。
この一年、思った以上のだらしなさに呆れはしたが、彼の根っこにある強さに惹かれていった。
○○は空へと目を移す。
高層ビル群の上にぽつんと浮かぶ、真ん丸の月。
昨年に続き、今年も綺麗な満月だ。
「お前、いつまでここで働くつもりだ」
横からの声に再び視線を向けると、銀時は団子を手に取り、口に運んでいた。
「腰掛けだろ、ここは」
○○は今、『スナックお登勢』で働いている。
一年前、金貸し業を廃業した○○は新しい職を探していた。
働き口が決まっていないならしばらく手伝ってほしいとお登勢に頼まれ、そのまま一年が経ってしまった。
「結構楽しいんだよね、この仕事」
水商売など考えてもみなかったが、やってみたら意外と楽しかった。
多種多様な人が出入りしているため、知らなかったことを聞く機会も多い。
金貸し業では客と笑い合うことなど到底なかったが、ここではたくさんの人と笑い合える。
「楽しいたって、セクハラジジイなんかもいんだろ」
「そりゃまァ……いなくはないけど」
突然あたりが暗くなり、○○は顔を仰向ける。