• テキストサイズ

~あさきみじかしゆめ~ 銀魂短篇集

第2章 桂小太郎《愛し言の葉》※攘夷戦争時/シリアス/夢主自害ネタ


「もう、喋るな」

 お前は小さく首を振った。

「言わせて……もう、最期なんだから」

 お前は俺の腕を掴んだ。血の気の失せた、冷たい手。
 今から手当てを施しても、最早……

「貴方の言葉には、嘘がなかった。貴方は純粋過ぎる。汚れ過ぎた私には、貴方の傍にいることが苦しかった」

 荒い呼吸と共に言葉は吐き出される。

「でも……離れられない」 

 俺の手のひらに伝わる鼓動が、次第に弱まっていく。

「貴方がいなければ、私は生きていけない。でも、苦しいの……」

 相反する葛藤から抜け出す方法は、こんな手立てしかなかったのか?
 俺が抱かなかったことで、お前を苦しめていたというのか?
 抱いていたら、お前はさらに深い闇へと落ちていたはずだ。ならば、どうすればよかったんだ――
 お前は地面を探った。そこには、胸を刺したであろう短刀が転がっていた。
 手探りで掴むと、その柄を俺に握らせた。

「何を、させる気だ……」

 お前の鮮血で真っ赤に染まった俺の手は、震えていた。
 あれは、もうじきお前を喪ってしまうという、恐怖から来る震えだったのだろう。

「私は、貴方の腕の中にいる時が一番幸せだった。だから……貴方の手で……」

 毎夜、俺はお前を抱き締めた。
 機械のように絡みついて来るその体を抱き締めながら、俺は何度も口にした。

 ――もう、いいんだ。もう、苦しまなくていいんだ。

 強要された振る舞いなどもうしなくていい。
 これからは、自分の意志で生きていける。何度も俺はそう告げた。
 俺の元にいること自体が、お前を苦しめていたことにも気づかずに。
/ 140ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp