• テキストサイズ

~あさきみじかしゆめ~ 銀魂短篇集

第14章 志村新八《嫁に来ないか》


 彼女は、□□○○さんというらしい。
 なかなか名うての実業家の娘で、この度、縁談が持ちかけられたとか。
 間もなくその縁談相手がやって来ることを、今朝、突然告げられたという。
 その話を僕は今、○○さんの部屋の中で聞いている。今、僕は年頃の娘さんと部屋で二人きりという状況。

「○○さん……」

 彼女はベッドに腰掛けている。僕は着物を脱ぎ棄てた。
 そのまま僕は○○さんに……なんてことはもちろんなく、

「これ、何ですか……」

 脱いだ着物の代わりに、渡された着物を身にまとった。

「だから、お嫁に来てほしいんですってば」

 渡された着物は、女物。
 吉原やら、かまっ子倶楽部やらで女服も慣れているとはいえ、こうもすんなり着られてしまう自分が嫌になる。

「なかなか似合いますね」

 ○○さんは僕の姿を見て、頷きながら感心している。

「次はメイクです」

 僕のメガネを取り、○○さんは化粧を塗りたくった。アイメイクまでバッチリと施しているようだ。
 僕の顔を覗き込む、○○さんの顔が目の前にある。
 メガネなしでも、この距離ならば充分によく見える。僕は目を閉じた。
 このまま間近で○○さんの顔を見ていたら、ドキドキで気が狂いそうだ。

「あとは髪型ですね。いくつかウィッグの種類ありますけど……」

 顎に手を当てて、○○さんは考える。
 僕の女装時の髪型といえば、相場が決まっている。

「おさげが似合いそうですね」

 やっぱり。
 誰が見ても、イモい僕の風貌には、イモい田舎の女学生風の髪型が浮かぶらしい。

「名前はえっと……パチ恵ちゃんでいいかな?」

 そっちもかィィィ!
/ 140ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp