• テキストサイズ

~あさきみじかしゆめ~ 銀魂短篇集

第13章 高杉晋助《雪桜》


 松陽を助け出すために、高杉は村を出る。
 いずれその日が来るだろうことはわかっていた。
 許嫁となってすぐに、○○と一緒になる気はないと高杉にはっきり告げられた。

 幹に触れる○○の手の甲に、白いものが舞い落ちる。
 顔を上げると、花びらの間から真っ白い雪が降り注いでいた。
 雪が強さを増している。

「お前はもう戻れ」

 空を見上げ、高杉は呟いた。

「晋助はまだ戻らないの?」
「一緒に戻るわけにはいかねーだろ」
「そうだね」

 雪と共に、一枚の花びらが○○の頭に降り注ぐ。
 高杉は○○の髪から花びらと雪を振り払う。
 見上げて来る○○の目を見つめ返す。

 父親は自分のことを全く理解していないが、○○を許嫁に選んだことだけは正しかった。
 だが、そのたった一つの正しい選択は、受け入れられるものではなかった。
 傍にいてやれない自分には、○○と一緒になることは出来ない。

 ○○の頭を引き寄せる。
 微かに触れる唇。時期外れの寒気に冷えた、華奢な唇。
/ 140ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp