第8章 神威《血涙 -chinamida-》※夢主殺されネタ
足元に転がる死体。
俺が皆殺しにするはずだった連中だ。
この星の生物はもう、どこにも残っていないだろう。
ここ最近、どの星へ行っても同じことが繰り返されている。
行った先に、俺が殺すはずだった奴等の死体。
その中で、アイツが笑顔で俺を迎える。
出会った時から変わらない、目障りで憎らしい、生意気な笑顔。
《血涙 -chinamida-》
「神威、ひっさしぶりー」
能天気な笑顔を浮かべ、またアイツは屍の上に座っていた。
右手を俺に向けてヒラヒラと振っている。
左手には握り飯。俺が来るのを待ちながら、腹ごしらえをしていたようだ。
「○○……どこが久しぶり?」
俺の行く先行く先に、必ず○○がいる。
「いい加減さ、俺の邪魔するのやめてくれないかな」
どこで情報を得ているのか、○○は俺が標的に定めた星に一足早く乗り込み、壊滅させている。
「そんなに楽しい? 俺の邪魔するの」
「楽しいよ。ちっちゃい時からそうだったでしょ」
微塵も笑顔を陰らせることなく、当たり前のように言い放つ。
○○は俺の姉弟子にあたり、ガキの頃から一緒に過ごして来た。
数日早く弟子入りしただけのくせに、姉弟子風を吹かす、いけ好かない女。
「邪魔するために神威の誘い断ったんだし」
鳳仙の旦那の元を発つ時、俺は○○を誘ったんだ。
宇宙中の奴等を皆殺しに行く相方に。
「一緒に行動してたんじゃ、邪魔は出来ないからね」
誘いを断った○○は、それでも俺と同じ行動を取る。
先回りして邪魔をしては、俺の反応を楽しんでいる。
ガキの頃からのこの歪んだ性格は、いつまでも変わることはないらしい。
「でも、いい加減飽きて来ちゃったから、今日でおしまいにしようと思ってるんだ」
発せられた意外な言葉に、俺は少なからず面食らう。
出会ってからずっと、○○は俺をからかうためだけに生きているんじゃないかとすら思えていた。
「へえ。それはよかった。じゃあ、ようやく邪魔されずに殺しが楽しめる」
本心からの言葉。
それでも、残念という気持ちが過ぎったことも確かだった。
俺と○○、どっちが先に敵を壊滅させるか。
ゲームのように楽しんでいた所もあった。一度も勝ったことはないけれど。