第28章 土方十四郎《ハッピーバースデーの夜に》
「それは……」
○○は顔を伏せた。
真選組のことを考えて――そう謝る土方に対し、不純な気持ちから企画を考えた○○は恥ずかしさで居た堪れない。
「この企画は、自分のために考えたんです」
もちろん真選組のためになるなら嬉しい。
けれど、一番は今日という日に、五月五日という日に屯所に来る口実を作ること。
本心を隠していることは出来なかった。
「今日が誕生日だって、近藤さんからお伺いしていました」
誕生日のお祝いだけを理由に屯所を訪う勇気はない。
たまたま仕事で来ることになっていたから、たまたま誕生日を知っていたから。
ついでを装えば、面と向かってプレゼントだって渡せる。
「仕事とプライベートを混同しました」
○○の頭頂部を見ながら、土方は困惑していた。
そこまでして、○○が自分の誕生日を祝いたい理由がわからない。
そもそも、たまにフラリと○○は屯所に現れる。今日もフラリと寄ればよかっただけではないのか。
恥じらいよりも照れくささよりも、呆れが勝り、○○は顔を上げた。
「土方さんのことが好きだからに決まってるじゃないですか」
好意を寄せている相手から向けられる好意に気づかない。
鈍感にも程がある。