第28章 土方十四郎《ハッピーバースデーの夜に》
「今日の模様は夜九時からの番組内で放映される予定です。ご協力ありがとうございました」
体験入隊と撮影が終わり、子ども達は帰路についた。
すっかり静かになった室内で、○○は近藤に礼を述べる。
「いやいや、礼を言うのはこちらの方だ」
土方も一息ついた。
以前の密着番組ではやりたい放題だった隊士の様子が放映され、真選組の評判を落とす羽目になった。
寺門通誘拐事件では隊士の目の前で攫われたことが報道され、真選組の信頼は地に落ちた。
今までメディアではロクなことがなかったが、今日の撮影では何も起こらなかった。
むしろ、今日の模様が放送されれば、真選組への見方が好意的に変わる可能性は大いにある程の出来だった。
子ども達も楽しそうで、親の満足度も高そうだった。
「初めて採用された企画なので、無事に撮影を終えられてホッとしました」
「○○さんの役に立てたなら何よりだ」
これ以上ない程、順調に終了した。
それなのに、何かが胸につかえている。
土方は中庭に降り、煙草を取り出した。
煙と共に胸のモヤモヤを吐き出そうとするが、一向に吐き出せない。
「土方さん」
振り返ると、不安げな表情で○○が背後に立っていた。
土方は眉間に皺を寄せる。胸のつかえの原因が○○であることは、土方自身もわかっている。