第20章 坂本辰馬《出逢いも残留も偶然じゃなくて必然》
坂本は荷を喪失したと、江戸の豪商と某国要人双方に頭を下げた。
快援隊の信頼に関わること。
遺失による賠償額は数億に上ったと聞いている。
「何でこんな……」
たまたま荷を引き受け、たまたま中身を知ってしまっただけのこと。
当人は納得して異星へ赴こうとしている。
多額の賠償金を支払ってまで、○○を救うことは大損害以外の何でもない。
それにも関わらず、坂本は他を顧みることなく、○○を助けた。
「わしが商いば始めたがは、貿易を通じて地球人と天人の調和ばはかるためじゃ。双方の幸せのためじゃ。わしが仲介したせいで誰かが不幸になったら、わしゃ自分が許せん」
その笑顔は、○○の心に深く刻みつけられた。
*
「○○、まだ起きちゅうか?」
その日の夜、坂本は戻って来た。
○○の部屋にまだ明かりがついていたため、扉をノックした。
「坂本さん。お帰りなさい」
「ケーキ、美味かったぜよ」
船へと戻った坂本は、自室の机の上に小さなメッセージカードを見つけた。
そこには祝いの言葉と、冷蔵庫にケーキが入っている旨が記されていた。
あらためて、○○は祝いの言葉を直接伝える。
「お誕生日おめでとうございます」
「サンキューぜよ」
その頭に、坂本は大きな手を乗せた。
○○の頬はほんのりと紅く色づく。
「わしからも、○○にプレゼントがあるんじゃ」
坂本は○○の頭に乗せていた手をポケットへと移動させた。
○○の前に、小さな箱が差し出された。