第6章 出会ってしまったひとりと一振り 〔肥前忠広〕
「はい。遠征中は任務完了もしくは終了期限までは本丸に戻るのが難しいため、レベルの高い部隊編成が求められます。この演練は政府が各本丸の実力を直接見て、遠征出来るかどうか判断する場でもあります」
「当たりまえだけど手抜きは出来ないね」
鯰尾がにっと片側の唇の端をあげる。
「無論です。そんなことをしては途中で重傷になってしまいます」
こんのすけは慌てて付け加えた。
「早く強くなって遠征任務が出来るようになりたいものだね」
歌仙が乱や鯰尾に言い、二振りは歌仙を見上げて「うん」と強く答えた。
「ここだね」と指定された紅葉の間に入る。
「失礼します」
からりと格子戸を滑らせると、中に居る審神者や刀剣男士が一斉にこちらを見た。
「本丸番号の書いて有るテーブルで待つんだよ」
すぐ近くにいた審神者が娘に教えてくれたので「ありがとうございます」と審神者に丁寧に礼を言い、部屋をぐるりと見渡し「91」と書かれたテーブルを見付け「あそこだ」とぞろぞろと移動し皆で腰掛けた。
「あのスクリーンで対戦している状況がわかるんだね」
小声で隣に座った歌仙に審神者は言うと、歌仙は小さく「そのようだね」と頷いた。
一面の壁にまだ真っ黒な大型スクリーンが有り、隣の部屋で対戦している様子が見られるようで、他の本丸から来た審神者たちは緊張したように座っていた。