第3章 任務の果てに 〔陸奥守吉行〕
説明に「ほぅおん」と頷いた陸奥守はがっかりした表情を見せる。
「そんなにぼうえんきょう座が見たいのですか?」
その様子から問うと、陸奥守は苦笑いを浮かべる。
「望遠鏡に興味があるきに…まぁ他へ行かないと見られないなら仕方ないき」
その言葉に審神者は返す。
「南と言えば…坂本竜馬さんの出身地なら、見る事が出来るかもしれませんね」
「おお、土佐か」
陸奥守はぽんとげんこつにした片手で、もう片方の手のひらを軽く叩く。
「ありがとう、主。土佐に出陣することが有ったら、わしを出陣させてくれぃ」
にかっと笑う陸奥守に審神者は微笑み「わかりました」と答える。
陸奥守はにこにこと上機嫌な様子で部屋を出て行き、途端審神者は顔をくもらせる。
「土佐に出陣って…どういうことかわかっているのかな…」
時間遡行軍によって歴史が改変されそうなところへ出陣する。
やがて陸奥守は願い通り、土佐へ出陣することになるが、それは放棄された世界。
修正することが難しい状況になり時の政府は元の通りの状態にするのを諦め、繋がる別な世界の時空を正しい歴史へと繋ぎなおす。
放棄された世界から見たぼうえんきょう座は、どんな風に見えたのだろうか。
任務から戻った陸奥守は何も言わず、そして、審神者も何も聞かなかった。
<終>