第1章 ぼくを困らせる可愛い主 〔にっかり青江/R18〕
ぼくの本体は幽霊を斬ったという謂れがある。
ただの説話だろ?と思いたかったらそう思って構わない。
実際のところはぼくから話すことでもないから言わないでおこう。
事実を知ったらぼくの神秘的なイメージが無くなってしまうよね?
「…そうやって誤魔化すんだから」
ぼくの逸話を知りたがるのは、この本丸の主である璃杏。
好奇心旺盛で勉強熱心なのは良い事だけど、ぼくたち刀のことを詳しく知りたがる。
鶴丸国永に墓の中はどうだったか、と問い詰めて、鶴丸が逃げたのを追いかけ回したこともある。
あの鶴丸国永が逃げ回っている姿を想像してごらん?
なかなか面白い姿だと思わないかい?
そんな刀剣男士の普段見ない姿を見せてくれるのも、主である璃杏。
そんな主に、今日はぼくが捕まっているという訳だ。
「誤魔化してなんてないさ。ぼくはぼくのイメージを自ら崩したくないから言わないだけだよ」
「だからぁ、それを誤魔化すって言うんじゃない」
むぅと頬をふくらます主は可愛い。
ぼくはひとさしゆびを伸ばして主の頬をつんと突いた。