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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第6章 梵天の華Ⅱ



長いまつ毛。
薄く開いた唇。
不健康そうだけれどキメ細かい、真っ白な肌。
濃く色付いた隈がなんだか痛々しいけれど、さらりと私の膝…太腿の上に散らばった白髪がキレイで。
目の前に広がる光景は、まるで絵画のようで…幻想的な美しさを放っている。

しかも佐野さんの顔は私の膝側ではなく、お腹の方を向いていて。

…あれ、いつの間に私の膝に落ちてきたんだろう?
全く気づかなかった私、逆にすごい。



「でけぇ声出すなよ首領が起きたらどうすンだコラァ!?」
「きゃぁあごめんなさいッ」
「三途うるせぇ…」
「マイキー!」



寝起きのせいか、幾分か低い声の佐野さんが目覚めたようで。
まだ眠そうに目をこすりながら欠伸をしている。

眉間にしわを寄せたまま、ちらりとこちらを見た佐野さんと目が合って…ヒュッと喉からおかしな音が鳴った。
ゆるりと瞬きをして、何事も無かったかのようにゴロン、と寝返りをうった佐野さんは腹筋だけで起き上がる。

一瞬、ほんの一瞬だけ殺されてしまうかと思った。



「…久しぶりによく眠れた」
「それは良かったです。何か飲みますか」
「いらねぇ、帰る」
「車出しましょうか?」
「鶴蝶呼んでくれ」
「うっす」



テーブルに置いていた銃を手にした佐野さんと、「下まで送ります」と彼の後を付いて歩く春千夜さんの背をただ見つめる。
窓の外を見てみれば、日は沈んでいて、もう薄暗くなっていた。

そんなに寝てしまったんだ…と私も目を擦っていると。



「コレ貰っていい?」
「えっ!?…ぁ、はい、ど、どうぞ…」



ダイニングテーブルの上に放置されていたカップケーキを3つ手にした佐野さんは、その内のひとつをまた口に運んだ。

よほどお気に召したらしいです。



「蛍」
「!」
「美味かった」



無表情だったけれど。
欲しかった言葉を言ってくれたのが、心から嬉しくて。
無意識に口元が緩むのを両手で隠しながら、ありがとうございます、と…なるべく聞こえるように小さく呟いた。



「それと、苗字じゃなくて名前で呼んでいいから」
「……え?」
「また来る」



素っ気なく、でもどこか柔らかくなった、私への態度。
思考が追いつかない中、口先だけは勝手に動いた。



「…はい、お待ちしてます。万次郎さん」





第11章に続く。
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