第3章 甘えて、いい…?《佐野万次郎》●
「はっぁ、んふ…〜ッ、ンん…ぅ」
「チュッ、…蛍、もしかして2回イった?」
「っ、はぁ、ぅ…わか、な、ぃ…ッ」
両手が解放されて、万次郎は私の額にキスをしたあと、あっつ…と言って立ち膝でTシャツを脱ぎ始めた。
あらわになった綺麗な腹筋に見惚れながら、万次郎ってまだ服着てたんだ…とぼんやりとした頭で思う。
脱いだシャツをベッドの下に投げ捨て、乱れた髪をかきあげる万次郎の色気にキュン、とイったばかりのナカが疼いた。
無意識に唇を噛みしめて眉を寄せれば、そんな私に気づいた万次郎がニヤリと笑う。
「ンな顔しなくても、ちゃんと蛍がほしいモンやるから」
ちょっと待って。と言って離れた万次郎は、呼吸を整える間もなく戻ってきた。
万次郎が手にしている見慣れた小さな袋が目に入って、小さく「ぁ…っ」と声が漏れる。
いつもならこんな風に反応することはないのに、1週間ずっと万次郎と会わずに離れていたせいか、それともこの行為を私の…生理期間と相まって2週間近くしていなかったせいか…どっちかはわからないけど、初めてシた時みたいに心臓がドクンと大きく跳ねて、思わず体を縮こませた。
体を抱き寄せるように胸の前で腕をクロスさせていると、万次郎がキョトンと目を丸くして、ベッドのそばで一度立ち止まった。
「…なに、どした?めちゃくちゃ可愛いんだけどその格好」
「ひっ、ぅ…待っ、も、いぃ…ッ」
「は?何言ってンの、まだまだこれからだろ」
さっき2度イキしたからもう充分、と首を振るけど、万次郎が許してくれるはずもなくて。
それもそうだ。私は満足したけど、万次郎はまだ一度もイっていないのだ。
それに、万次郎は何かスイッチが入ると、体力が無限状態になってしまう時がある。
私の体力、持つかな…と不安になり、今日はスイッチが入りませんように、と願った。
「…それとも、ほんとにイヤ?」
それならやめるけど…と、少し残念そうに呟いて、私の髪をひと房とって口付ける万次郎は、私の肌に触れそうで触れない。
ただ見つめるだけで、…触って欲しいのに、触ってくれない。
手を伸ばしても、わざと避ける。
「っ…ぁ」
もどかしくて、無意識に膝を擦り合わせる。
その動きで下半身の方からくちゅ、と音がして……万次郎は、試すように口角を上げた。