第3章 甘えて、いい…?《佐野万次郎》●
「まんじろ、ゃ、つけ、すぎ…ッ、ぁ」
「つけていいって言ったの蛍じゃん」
「そ、だけどぉ…っ」
気づかないうちにブラを外され、ズボンも剥ぎ取られ、ショーツ一枚の姿になっていた私。
胸元あたりで済むかと思いきや、万次郎は私の耳の裏や二の腕、鎖骨、お腹、足の付け根、太ももの内側など、何ヶ所にもわたって…数えきれないほどのキスマークを残した。
キスマークだけならまだしも、噛み跡もいくつか視界に入る。
とんでもないことを口走ってしまった私が悪いんだけど。
…でも、まさかここまでとは…思わなかった、し…
「も、いいでしょ、充分だよ…ッ」
「…ン、とりあえず終わる」
「とりあえずって…!」
私の膝裏をつかんで持ち上げた万次郎は、ショーツと太ももの境目にキスマークを残して…とりあえず終了。
私の体に手を這わせながら上昇してきた万次郎は、唇に軽くキスを落とす。
「どう?緊張ほぐれた?」
「…ぅ、え?」
「まあ大丈夫そうだな。濡れてるみたいだし」
「ぁあッん…っ」
膝を立てた足の間に体を入れて覆いかぶさっている万次郎が、ショーツの中に指を入れて…愛液が溢れている所をわざとぐちゅ、と水音が響くように指で撫でた。
唐突すぎて大きな声が出てしまったけど…それよりも、万次郎は私の緊張をほぐすために、キスマークで時間をかけてくれたのか、と気づいて、…嬉しくて、胸がキュンと疼いた。
「まん、じろ…」
「ん、なぁに蛍」
もう、体は震えていない。
万次郎がキスマークをつけている間、あの人たちのことを思い出すことは無かった。
きっともう、大丈夫。
怖く、ない。
「…あの、ね…」
「うん」
「……甘えて、いい…?」
「…えっ?」
「あの、…万次郎に、甘えてみたいなぁ、って…」
顔の横にある万次郎の手に擦り寄って、目を見開いて固まっている万次郎を見つめる。
甘えるの下手くそ、って万次郎にいつも言われる通り、私は人に対する甘え方を知らない。
どこからどこまでが“甘える”なのか、正直わからないけど…万次郎にして欲しいことを言えばいいのかな、って、勝手に自己解釈した。
それなら、簡単だ。
だめ?と首を傾げれば、万次郎がフッと笑う。
「ん、いいよ。いっぱい甘えて。蛍の可愛いとこ全部見せてよ」