第14章 たまには家で《灰谷竜胆》
「でもここ…私の家の壁薄いからやだ。竜胆くんの家に行きたい」
「や、兄貴いるだろうから却下。ぜってぇ『まーぜーて』とか言ってくるし。つーかもう待てねェ」
蛍が声ガマンすりゃいい話じゃん?
そう言って瞳を蕩けさせながら、竜胆くんは私をゆっくりとベッドに転がして押し倒す。
私の下にいた竜胆くんが、今は上にいる…この状況だけでもドキドキするのに、あまりにも愛おしげに見つめてくるから。
到底無理な話でも、ギシッとベッドが音をたてるほど全身に体重をかけられてしまえば、抗えるはずもなくて。
「……あ、まって、竜胆くん待って!」
「は?なに、待てねぇつった、」
「私お風呂入ってないっ」
ゆっくり眠ったおかげか、竜胆くんが来てくれたおかげか…昨夜の発熱がウソのように元気が溢れでてくる。
でもお風呂は入らせてほしいナ。
今さらだけど、仕事着のまま…というわけでなく、竜胆くんが着せ替えてくれたらしいパジャマ姿だから。
着せ替えるときに、きっと竜胆くんは一日仕事して汗をかいた私の体臭は感じとってしまっている、だろうけど…。
いくら一緒のベッドで眠ったとはいえ、お風呂にも入ってない状態で、このままは……私が嫌だ。
「…ンなの、オレは別に気にしねぇけど」
「やだ、私が嫌なの!」
「えー…じゃあ風呂でシよっか?」
「あ、ぅ」
「っし、そうと決まったら行くぞ〜」
「え、わあっ」
昨夜のように軽々と抱き上げられて、洗面所へ直行。
まさかのお風呂で。
真昼間から。
病み上がりなのに。
「…お、お手柔らかに…」
「まァ……無理かな」
「ちょッ」
「夜は寝かせてやっから。な?」
抵抗する間もなく、湯船にお湯をためながら服を剥ぎとられて。
「奪衣婆?」と笑いながら言った口を塞がれてしまえばもう、彼のペースに巻き込まれて止まることはできない。
また熱が出たら、どうしよう。
END