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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第13章 パステルピンク《今牛若狭》●





「…鍵?なんの鍵?」
「ン、新居の」
「…え、若狭くんいつの間に引っ越したの?」



若狭くんのお家の鍵は、もうすでに貰っている。
先週に「ちょっと鍵変えるから」って言われて、一度返却したけど…あ、その時に引っ越したのかな?



「一週間くらい前。前のとこよりちょっと広いよ」
「そうなんだ。ふふ、ありがとう!使わせてもらうね?何のキーホルダーつけようかな〜」



カバンの、チャックがついたポケットに鍵を大事に納めれば、若狭くんが私の手に指を絡めてきたからそれを絡め返して繋ぎ、予約していたケーキ屋さんへ足を向ける。

若狭くんと合流するまではたくさんのカップルや家族に目移りしていたけど、今はもう隣に愛しい人がいるから、少しも気にならない。



「あと、プレゼントは鍵だけじゃないから。もう一個は家にある」
「え!?そんな、鍵だけでじゅうぶん嬉しいのに…」
「オレがあげたいんだからいーの」



家から持ち出せないから帰るまでオアズケな?と言ってこめかみにキスをされる。
くすぐったくて、逃れるように若狭くんの肩に寄りかかるけど…大事なことを思い出して大きく息を吸った。



「あ、ねぇ若狭くんプレゼント何がいい?決められなかったからまだ買ってなくて…。これから買いに行けたら、」
「オレは蛍がいいな。プレゼント」
「っ…〜も、外ではやめてったら…!」
「…そっちの意味だけじゃないんだケド」





若狭くんのその言葉の意味を知ったのは、若狭くんの新居に合鍵を使って「ただいま」と二人で入ってからだった。

リビングのテーブルに置いてあったホワイトベルベットのリングケースと、ブライダルピンク色の可愛らしい薔薇のブーケ。
よく見ると薔薇の数は4本。

驚きを隠せず硬直する私の足元にひざまずいた若狭くんは、蕩けるような甘い声と熱をもった瞳で、こう言った。



「だから言ったデショ。プレゼントは蛍がいいって」





END
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