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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第12章 聞いてないけど?《佐野万次郎》


〜おまけ〜




「…場地?」
《よぉ》



家に帰って夕飯を食べ、風呂から上がってすぐオレの携帯から着信音が響いた。
相手を確認した時点で首を傾げたけど、どこか上機嫌な場地の声色にさらに疑問を抱く。

オレが帰った後になんかあったか、別件…例えばどっかの族から宣戦布告を受けたとか…
でもそれなら、ケンチンかムーチョから連絡が来るはず…

様々な思考を巡らせたけど、場地の言葉に全部が吹っ飛んだ。



《どうだった?数年ぶりの初恋のお姉さんは》
「…はぁ〜」



手に持っていたタオルを床に落とし、濡れたままの髪をぐしゃぐしゃとかき乱しながら重いため息を吐いた。



いきなり突然、武蔵神社にやってきた幼馴染の蛍ちゃん。
小さい頃からオレやエマ、たまに場地も混ぜて休日に遊んでくれた優しい5歳年上のお姉さん。
大好きで、本気で好きで、小さい頃からそれを伝えていたのに信じてもらえなくて。
チャンスだと言わんばかりに今日は攻めに攻めたけど…ちゃんと通じたかどうかはわからない。

でも…それより、蛍ちゃんがめちゃくちゃ可愛くなってて驚いた。
いや元から可愛いけど、磨きがかかってたっつーか…
おかげで、余裕で攻めるつもりが、心中はシャレにならないくらいドキドキしっぱなしだった。

ンで?と言う場地の声で我に返り、頬に熱が集まるのを感じながら小さく告げる。



「…あと10秒一緒にいたら襲ってた」
《ぶはッ!ギリギリすぎだろ!》
「だッ、て可愛くなりすぎだもん何だよあれ!?彼氏いたらたぶんオレそいつ殺すかんな!?」
《おー落ち着け落ちt…》
「マイキーうるさい!」
「ごめん!!」



エマの怒鳴り声に思わず素直に謝ってしまうくらい、心が穏やかじゃない。

それに…ただ可愛いだけなら、まだ良かった。



「…蛍ちゃんさぁ」
《おう》
「5年前より何か…いい匂いするし、柔らかくなってた…」
《柔ら………あー、胸か》
「バッ言うなよ!」
《盛ってんな〜マイキー》
「盛ってねぇ!!蛍ちゃんをそんな目で見んな!ぜってぇ渡さねーかンな!?」
《見てねーしいらねーわ、お前だけだろ》
「ぐッ…」
「マイキー…」
「ッごめん部屋いく」



さっきバイバイしたばっかなのに。
早く会えねーかな、なんて…オレらしくもねぇか。





〜了〜
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