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【東リべ/中・短編集】愛に口付けを

第11章 梵天の華Ⅲ




無理やり起こされたあげく、三途の家にあの女が欲しがっている物を届けろなんて指示され、何と答えようかと寝起きのよく働かない頭をフル活用した…結果。



『死ねッ!!!』



まだ通話中の文字が表示されていたスマホをフローリングの床に叩きつけ、その勢いのままベッド横のチェストに置いていた銃で撃ち壊した。

腹の底からため息を吐くと同時に上半身を起こし、少し寝癖のついた髪を乱しながら頭を抱える。



『……まだ2時間しか経ってねぇじゃん…くっそヤク中野郎帰ってきたらマジでぶっ殺す』



深夜、…というより明け方に仕事を終えようやくベッドに入り、部下から電話が来るまで寝ていようと目覚ましをセットせずに眠りについてから、たった2時間。

人間の三大欲求の一つを邪魔されたら、そりゃ誰だってキレるよな?



『…兄ちゃん何で今ので起きねぇの』



2時間前、「なんか寒いから一緒に寝よ♡」と勝手にベッドに潜りこんできて隣で寝ていた兄貴。
髪を乱すように手のひらで頭を軽く小突けば、うつ伏せで枕に顔を埋めていた兄貴はモゾモゾと身動ぎをして…開いていない目をオレに向けて掠れた声を発した。



『…なぁんかムカつく声聞こえたなぁ…』
『起きてんじゃん…』
『…ん゙〜…用件、何だって…?』






なーんてことがあったせいで二度寝もできず、仕方なくベッドから降りたのは3時間前。

スマホを壊したオレの代わりに兄貴の指示で、慌てて買い物を済ませたらしく息切れをした部下たちからパンッパンに膨れた袋を受け取り……今に至る。



「行かねぇなんて言うなよ〜、一ヶ月ぶりだぜ?蛍チャンに会うの」
「オレあの女嫌いだし」
「えー何で?可愛いじゃん」



もうすぐ着きますが…と恐る恐る問いかけてきた運転手に兄貴が「いーよ、そんまま」と勝手に指示して。
オレは窓の外を眺めながら何も答えることなく足を組み直すけど、舌打ちが止まらない。

ガサガサと、オレと兄貴の間で揺れる買い物袋の音がうるさい。
この袋、女の顔面に思い切りぶん投げてやろうか…なんて。



「ほぉら着いた、降りろ〜」
「……」
「降りろ」
「……あ゙〜もうッ」
「ん、イイ子♡蛍チャン起きてっかな?」



時刻は8時半になろうとしている。
起きてなかったら、マジでこの袋ぶん投げてやる。


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