第1章 オレにはしてくんねーの?《松野千冬》
「…の、喉乾いた、ね」
「…おー」
乱れた髪を手ぐしで整えて、どこか気まずそうに笑ってペットボトルを開ける蛍。
擦り寄るペケJの頭を撫でながら水分を補給した蛍は、ペットボトルの蓋を閉めたあと顔を覆ってため息を吐いた。
オレもとりあえず…とペットボトルを手にとるけど、頭がついて行かなくて蓋を掴んだまま動けなくなる。
28℃に設定されているクーラーでは、火照った体を冷やすには物足りないらしく、人工的な風がぬるく感じて。
忘れていた暑さの反動で呆然とするオレの背中に、ゆっくりと汗が流れた。
「………生殺しキッツ…」
第7章へ続く。