【 ヒロアカ 】只の私のものでいて ( R18 )
第3章 春の日々、散るらん
「だぁれぇが!黄色頭だ!!!!」
「黙れクソモブ、いいからその手離しやがれ!!!」
上鳴くんが起こしてくれたのはいいものの、そのまま猛烈な勢いで赤い瞳の男の子に肩を抱かれる。
い、一体何が何だか訳が分からない ...
そもそも何でこの男の子はこんなに怒っているのだろうか ....
私、気付かない間に何か気に触るようなことでもしちゃったかな ...
いや、もしかすると
(私の家柄のことを知ってる ... ?)
『あ、あの、君ッ』
「あ?どうした」
勇気を出して話しかけた一言。
その返答は想像していたよりもずっと優しいものだった。
私の肩を抱く手は相変わらず強いけれど、ゆっくりと交わった彼の瞳は優しく細められていて、何だかホッとする。
(この人、案外優しい人かも)
『お名前を聞いてなかったな、って思って』
「 ... 爆豪勝己」
『爆豪勝己くんか ... よろしくね!爆豪くん』
「勝己でいい、そう呼べ」
「そう呼べ」という声は少し照れ臭そうで、勝己君は困ったように私の肩から手を離した。
自分の首元を抑えながら俯く彼の表情が何だか可愛らしくて、私はつい微笑んでしまう。
『うん!わかった勝己くんね』
「 ... おォ 」
「爆豪だけずりぃ!!!俺も電気って呼んで〜♡」
上鳴くんは大きな声で突進してくると、そのまま ズイ と私に顔を近づける。
相変わらずの上鳴くんの気迫に少し圧倒されてしまうけど、何だか友達が出来たみたいで嬉しい。
『う、うん、勿論電気くッ ... 』
電気くんと呼んだはずの声はかき消され、大きなゴツゴツとした手が私の口元を覆い、強い力で引き寄せられた。
微かに香る甘い匂いに、何だか、クラクラする ...
「俺の名前だけ呼んでろ」
「沙奈」
唸るような低い声
ギラリ と光る赤い瞳
切なげに細められている目元が何だか苦しい
本能的に目を逸らすと、私の口元を覆っていた勝己くんの手がそのまま私の頬に触れた。
〝 絶対に目を合わせてはいけない 〟
誰かが、
そう警告しているのを感じた。