【 ヒロアカ 】只の私のものでいて ( R18 )
第3章 春の日々、散るらん
1 - A と書かれた扉は随分と重たかった。
やっと開いた扉の先に見えるのは人の顔、顔、顔。
う、と後ずさりしそうになるのを必死に堪えながら辺りを見回すと、教室にはまだ半数ほどの生徒しか居ないようだった。
その全員が興味津々といった顔をして私を見詰めているのが分かる。
( 何だか、動物園の動物になった気持ちかも )
初めての学校、初めての教室
( 新入生はまず教室に入って何をするべきなんだろう ... )
事前に勉強してこなかったことを少し後悔しながらも、勇気をだして一歩教室に足を踏み出す。
「な、なあなあ!君も1年A組!?」
『へッ ... う、うん!そうだよ』
「まじかまじかまじか!!!!!!」
「キタコレ!!!!」と絶叫している名前も分からない彼の気迫に押されてまた教室から出てしまいそうになるのをグッと堪えていると、その彼を宥めるように他の男子生徒が会話に入ってきた。
「おい上鳴〜その子怖がってるだろ!漢らしく、まずは自己紹介が先だ!」
「あ、ごめんそうだよな!さんきゅ切島」と返す絶叫していた彼は上鳴くん、というらしい。
「改めまして俺は上鳴電気!俺も君と同じで1年A組だから、今日からクラスメイトとしてよろしく☆」
「俺の名前は切島鋭児郎!俺も上鳴と同じ1年A組だ。よろしくな!えっと ... 」
『あ、えっと、私の名前は沙奈です!よろしく、上鳴くん切島くん』
「 ... 可愛い」と呟く上鳴くんは私の顔をまじまじと見詰めながら、グーサインをブンブンと振り始める。
その視線にはやっぱり何だか慣れなくてついたじろいでいると、後ろから大きな爆音が響き、教室がカタカタと音を立てた。
「クソがぁ!!!邪魔なんだよ!!!いちいちでけえドアなんか作りやがって!!!」
その大きな音に驚いて振り返ると、目の前いっぱいに広がるのは赤い瞳を持つ男の子の顔。
「危ない!!!」という焦ったような上鳴君の声を後ろに感じながら、私の背中には鈍い痛みが走った。