第1章 revenge1
「そろそろ泣き止め、あいつらにバレるぞ。」
自転車が止まり、ドラケンさんにそう言われた。
「ごめんなさい、もう少しだけ・・・。」
ドラケンさんの背中に隠れて、必死に涙を拭く。
土手の上に立ち、マイキーさんが話し始める。
「今って不良がダセーって言われる時代だろ?」
この頃から不良は敬遠されてたっけ。
「兄貴の世代はさ、この辺りもすっげー数の暴走族がいてさ、その辺をチョッカンコール鳴らして走ってた。」
ドラケンさんの横から覗くと、振り向いたマイキーさんの笑顔が見えた。
「みんな肩肘張ってさ、喧嘩ばっかして、でも自分のケツは自分で拭いて。そんな奴らがなんでダセーんだ?」
彼はお兄さんを心から尊敬していることがわかった。
彼らにとって不良はヒーローなんだ。
そんな彼が私にとっても、とても愛しいヒーローなんだ。
彼は草の上に座り、こう続けた。
「だからオレが不良の時代を創ってやる。」
泣き止まなきゃ・・・でもムリなんだ。
なんにも知らなかった彼を、私は少しだけ知った。
こんな人が・・・こんな人が総長の東京卍會が、巨悪と言われる極悪集団になったのには何か訳があるはずだ。
「おい・・・。」
「もう少しだけ待ってください。」
涙が溢れてくる。
ドラケンさんの背中にしがみついて、声を押し殺して泣いた。
「オマエもついてこい。オレはオマエを気に入った、花垣武道。」
なにがあっても、私はもう失敗はしない。
こんなにも優しい、愛しい彼がこれ以上苦しむとこなんて見たくない。
マイキーさん、愛しています。
「喧嘩強ぇ奴なんていくらでもいんだよ、でもな・・・。」
ドラケンさんが話し始めた。
「譲れねぇもんの為ならどんな奴にでも楯突ける、オマエみたいなやつは、そーいねぇ。」
かっこいい彼の隣には、こんなにかっこいい人がいるんだね。
彼らは私たちに背を向けて歩き出した。
「考えとけよ、タケミっち。」
顔だけ振り向かせて、ドラケンさんが彼に言った。
「あ、星那もね。オレの傍にいて、オレが大切な人を傷付けそうになったら、オレを殴ってでも止めてよ。」
「っ!・・・はいっ、必ず!!」
マイキーさんが笑顔で私に言った。
泣いてるのバレちゃったな。