第1章 revenge1
恐る恐る腕を上げて、彼の頭と肩に抱き締めるように手を置く。
置いただけでそれ以上は力が入らない。
ぎゅっと抱き締めたいのに・・・。
彼のしている行為は、全然いやらしく思えなくて・・・それ以上先のことは一切、想像させない。
「マイキーさん、ごめんなさい・・・私、諦めたの・・・いくら力いっぱい抵抗しても意味なくて・・・抵抗をやめたの・・・。」
胸から唇を離し、私を見上げた。
「キス、されそうになって・・・それだけは必死に抵抗した、でももうムリだって思った時、タケミチくんが来てくれた。」
あの時、タケミチくんが来てくれなかったら、キスも何もかも奪われていたかもしれない。
「オレ、あの日、ぺーに呼び出されて・・・パーのことがあったから、どうしても放っておけなくて・・・オレも一緒に行けばよかったっ・・・!!ごめん・・・。」
そっか、ぺーさんが・・・。
ぺーさんは大切な仲間だもん、仕様がないよ・・・。
「あれから、星那から一切連絡が返って来なくて、一緒に行かなかったこと、ずっと怒ってるんだと思ってた・・・。」
本当にごめんと言いながら、首に腕を回し私をぎゅっと抱き締めた。
私は座り直し、ずっと彼に抱き締められていた。
でも私は、彼を抱き締め返すことが出来ない。
触れることは出来るのに、それ以上は力が入らなくなる。
それから少し時間が経ち、私も彼も少し落ち着いた。
「オレ、家に入ってくる時、オマエの母ちゃんがいてさ、会ったこともないのに、すぐにオレだって気付いて、星那の傍にいてくれって言って、仕事に行った。」
お母さんは、彼の名前しか知らないはずなのに、どうしてわかったんだろう。
「オマエのこと守れなかったのに、オレを信じて頼んでくれた。」
彼は、なんかそれがすげー嬉しかったと笑った。
それからは、ただ手を繋いで傍にいた。
タケミチくんからメールが来た。
《 そろそろ戻っても大丈夫か?》
私たちの居場所はここじゃない、12年後の未来だ。
「マイキーさん、まだ一緒にいて。」
彼に中学生の私を託して、私が居るべき場所に戻った。