第7章 revenge4.5
お爺さんが万次郎にもう休んでもいいぞと言ってくれたので、ドラケンさんも一緒に、彼の部屋に行く。
「ねぇ万次郎・・・エマちゃんの夢、知ってる?」
彼は何も答えない。
それでも私は、そのまま続けた。
「ドラケンさんと結婚して、万次郎とバカやってるのを叱るんだって・・・万次郎の夢聞いた時、私・・・すごくやるせなくなっちゃった・・・。」
ドラケンさんが俯き、ズボンに染みを作っていく。
ドラケンさんの方に近付き、人差し指を彼の左胸に付ける。
一瞬驚いたように肩を震わせたが、顔を上げることはない。
「エマちゃんは・・・ここにいるよ。」
いつもとは違い、下ろしている髪の上から、そっとポンポンと手の平を置く。
立ち上がって、ベッドに座って項垂れる万次郎に近付いて、前に膝を付いた。
エマちゃんを失った悲しみは、晴れることはない。
私だってそうだ。
だけど・・・今声をかけられるのは、私だけだ。
でもなんて声をかければいいの?
大切な人がみんないなくなってしまった彼に、何を言えばいいの?
そっと彼の手を握った。
「悲しいよね・・・辛いよね・・・苦しいよね・・・ごめんね、泣けなんて言って・・・簡単に泣けるなら、そうしてるよね・・・。」
彼はきっと今、泣けない程の苦しみの中にいる。
1人になりたいなら帰るよ?と聞くと、握っていた手を引っ張られて彼の胸に飛び込むと、キツく抱き締められた。
彼が震えている。
背中に手を回して、優しく撫でた。
肩に顔を埋められて、そこが濡れていく。
「エマがっ・・・エマしか、残ってなかったのに・・・。」
「うん、そうだよね・・・私がっ・・・うっ、ふっぐっ・・・ちゃんと、うぐっ、守って、ればっ・・・。」
「オレが守れなかった・・・エマを愛していたのに。」
ドラケンさんが、私の後ろから覆い被さるように、私たちを抱き締めた。
部屋に、私たち3人の嗚咽だけが響く。
もうエマちゃんには会えない。
ねぇエマちゃん、そっちで・・・真一郎さんや場地さん、イザナに会えた?